《五年》(十六)好きな仕事を辞める

(十六)好きな仕事を辞める

3月、春は暖かく花が咲き、冬を乗り切って、すべてが蘇ってきた。「嫌というほどの苦しみをなめる」と言うほどではない。二人の中国人従業員から受ける悩みを除けば、日頃から面白いお客さん達と触れ合い、世界中の逸話やエピソードを知ることができるのは爽快だ。

冬の「苦しい時期」に、私は部門の他の2人の英会話ができる同僚と「VISIT JAPAN Travel Mart 2018-ASEAN・INDIA-」大会に参加した。大会で私は日中ハーフのイケメンと知り合った。彼の大学の同級生の中学校時代の同級生はなんと私の日本の親戚だ。この縁は、本当に奇妙だ。

神戸の素晴らしいナイトライフを教えてくれたり、友人を紹介してくれたりして、私は純正な日本の若者たちの付き合い方に触れるようになった。全体的に彼らは礼儀正しくて、親近感を持った遠慮があって、まず相手への尊重を第一に置いて、冗談や軽口、あるいはふざける行いは必ず熟考して実行しなければならないのだ。イケメンの何人かの大学の同級生らと一緒に、何度か神戸のバーに行って、初めて日本の夜の生活を感じた。

2019年3月、「鉄板焼」を習いたいと思い始めた。料理人がナイフやフォークを振り回すのを見るたびに、かっこよくて面白そうだと思い、自発的に応募して、本部の料理人の訓練クラスに参加した。手順から包丁の使い方、食材から調味料、身だしなみからお客さんとのインタラクションまで、すべてが揃っている。私は「鉄板焼」を覚えて、しかもお客さんの前で本格的に何回も実践した。最初の緊張から徐々に熟練してきて、お客さんとしゃべりながら、手に持っているヘラや包丁を振り回すことができるようになった。

鉄板焼」の付け合せといえば特別なもので、神戸牛ステーキと合わせた「赤いこんにゃく」は、多くのお客さんが血と勘違いしていた。近江八幡市の特産品とされる赤こんにゃくは、滋賀県全域で食べる習慣があり、三二酸化鉄という食品添加物が添加されており、こんにゃくを赤く色づかせるほか、食物繊維やカルシウムなどの栄養成分も豊富に含まれている。

数ヶ月待った後、私の日本の居住許可が正式に承認され、平成の最後の月に間に合った。許可が下りた以上、新しい仕事を探すことができる。

この会社は決して悪くはなく、仕事の内容も嫌いではないが、しばらく考えた後で、結局私自身のキャリアの方向性とあまり相性がよくなかった。日本に来てもうすぐ3年が経つが、居住許可と日本語の制限のため、本来のキャリアの方向を逸脱した職業に従事しなければならなかった。

もちろん、これらの仕事が悪いと嫌っているわけではない。一つ一つの仕事に感謝している。一つ一つの仕事は、私の人生に取って代わることのできないものを与えてくれた。

就活を始める段階で、私は一つのレストランの名前を言及しなければならない。「天望」だ。最後の3か月間、私はここでとても楽しい時間を過ごすことができた。通訳や鉄板焼きの手伝いに行く機会が多かった。天望の「秘密の小部屋」は店の一番奥にあり、約8平米で、プライバシーが守られ、Wi-Fiがあり、エアコンがあり、ドアには鍵がある。ドアに鍵がかかっていたら、自分一人、又は利用者数人だけの世界になる。私の新しい仕事はこの「秘密の小部屋」で見つけた。

2019年7月31日、ついに退社の日を迎えたが、この会社や三宮に、あまりにも名残惜しさを感じ、最後に「天望」から出てきた時は、恋恋の情のような気がした。

私達は皆多くの人に出会い、多くの人に別れを告げ、引き続き前に行くことができる。時には誰かをとても好きになることができて、時には誰かを失うかもしれない。仕事も同じで、人生は1回の旅で、出会ってまた別れる。一期一会だ。仕事を辞めたからといって、仕事が悪かったり不満があったりするわけではなく、時間が経つにつれて、次の人生設計には、その時の自分の心境と境遇に合った別の仕事が必要になるだけなのだ。