《五年》(十九)新しい仕事に就いて間もなくコロナウィルスに遭遇した

(十九)新しい仕事に就いて間もなくコロナウィルスに遭遇した

新しい仕事を探す時、私はExcelの表を作って、会社名、応募職、そして1次面接、2次面接と最終合格を通過した状況など、応募ごとの情報を記録した。

最終的に、私は4ヶ月の間に合計101社のポストにメールを送付したが、多くの会社からは返事がなく、応募した履歴書は海に沈んでしまった。

1次面接に合格したが2次面接に合格しなかった会社もあれば、その会社に合格したが最終的に私から断った会社も少なくない。私は現在、87社目に応募した会社で仕事をしている。

大阪にある専門職の事務所で、私が従事しているポジションは専門分野の翻訳兼オンラインマーケティングビッグデータ分析だ。高度専門分野の事務所は、その名の通り、仕事内容がかなり難しいことは間違いなく、専門用語にしても、業界内の複雑な制度にしても、容易ではない。同僚の多くは名門大学を卒業し、海外への留学経験もあり、専門分野の背景だけでなく、英語の聞き取り、読み書きにも精通しており、一言で言えば「エリート」達である。

入社したばかりの頃は、自分に少し自信がないような気がしていた。自分自身も優秀ではないことはないが、賢い人ばかりの中では、多少の言動や振る舞いにも気をつけなければならない。幸い、私の直属の上司はとても優しく、しかもとても辛抱強くて、私を助けてゆっくりこの仕事に適応させてくれた。彼はカナダの中学と高校に通って、英語のレベルがとても高く、しかも人柄はとても情熱的で、心の奥底に西洋人の活発な性質と明るい性格があって、すでにこの会社に勤めて15年以上、ずっと英日翻訳の仕事に従事している。

この部門はこの直属の上司が一手に創設した。彼は10年前に中国市場の見通しが明るいことを嗅ぎつけて、思い切って会社に直談判して、この主に中国市場を対象とした事業部を設立した。この事業部には私と直属の上司のほかに、台湾出身の先輩もいて、彼女はオーストラリアのある大学を卒業したマーケティング修士だ。英語は流暢だが、日本語のレベルはそれほど高くない。彼女はまだ日本に来て数年しか経っていないし、日本語も日本に来てから本格的に勉強した。しかし、彼女はとても賢い人で、学習能力が高いので、日本語のレベルはすぐに上達することができた。彼女もとても友好的で、辛抱強く多くのことを教えてくれて、私が会社に来たばかりの時の緊張や不安をなくしてくれた。

台湾の先輩や直属の上司には心から感謝している。

入社してから2020年6月まで、3人で毎日充実した日々を過ごし、楽しく出勤することができたのは、私が想像も体験もしたことのない居心地の良い職場だった。

しかし、しばらくしてすべてが変わってしまった。

2019年12月から発生源は不明だが、武漢から拡散したCOVID-19(コロナウィルス)は、ついに3月に大阪に目に見える影響を与え、本当の意味で我が社の出勤形態にも影響を与えた。

多くの日本の会社は、3月の緊急事態宣言の前には、普通に朝9時から夕方5時までの出勤制であった。しかし緊急事態宣言が発表されてから、多くの会社はテレワークシステムを導入した。私たちの会社も例外ではない。そこで3月から、私たちは続々と在宅勤務を始めた。

在宅勤務のメリットはいちいち挙げないが、試した人には自然と分かる。それがもたらすマイナスの影響についてお話ししたいと思う。私の仕事は同僚とのコミュニケーションを必要とする頻度が高いので、ほとんどすべてのタスクは同僚と協力しなければならない。在宅勤務後、皆が面と向かって話すことができない場合は、メールやSlackというツールを使ってコミュニケーションをとる必要がある。コミュニケーション時間は長くなるが、効率は面と向かって会話するほど高くない。

コミュニケーションの効率性は一番重要な問題ではないが、主な問題は、私と台湾の先輩との間で、お互いに会うことができないことから、いくつかの任務の処理の上で小さい誤解が発生した。彼女は私が彼女と競争していると思い、私は彼女が仕事の任務を手配する時にわざと私に制限をかけていると思いはじめ、ゆっくりと私達の間に微妙なばつの悪い雰囲気が発生した。