《五年》(八)仕事のルーティーン

(八)仕事のルーティー

会社は私を正社員のつもりで雇ってくれたので、レストランでのすべての仕事をマスターしなければならない。小型空港なので、時間帯によって繁忙度が異なる。季節、祝日、フライトの搭乗率も関係している。

当時、高松空港には東京、冲縄、上海、ソウル、台北、香港までの路線があった。大体、金、日、月、水曜日が忙しく、火と木曜日が暇で、土曜日が一番のんびりしていた。

レストランは朝6時から夜20時まで営業している。大体の状况は、朝6時に電気をつけ、レジ、コーヒーメーカー、アイスクリームメーカーを起動し、その日の新聞とポットの水を客のセルフサービスコーナーに入れ、それからパイロットと乗務員たちの朝食を準備する。すべてのコップに水を満たし、氷を入れ、コーヒーメーカーにミルクを注ぐと、レジ精算が始まる。毎日30万円の現金がレジに常備されていて、朝に一度金額を確認して間違いの有無を記録する必要がある。

6時30分頃に開門して客を迎える。パイロットと乗務員は6時30分から6時50分までの間に来る。一番早い7時40分の便に乗る客も次々と来る。朝食時間は11時までだ。

朝食の時間帯には、空港で働く一人の高齢者が食事に来ることがよくある。彼に対して、会社は特別に割引を与えていた。約六、七百円で都心の一、二千円のものを食べることができる。私も朝食の食べ物が大好きで、特にサーモンソテーや牛丼に温かい味噌汁が添えられている定食は、寝ぼけまなこの朝食だが、特に冬は本当に幸せな気分になる。

12時から13時まではランチタイムだ。この時、空港のスタッフの大部分は食事に来て、店では空港スタッフのために特別に従業員用の食事を用意していた。1人前756円、4種類のセットメニューを選べ、四半期ごとにメニューを変える。従業員は無料の飲み物と食後のデザートを楽しむことができる。彼らはセット以外の料理を注文すると、1人前200円の割引を受けることができる。

ランチタイムの豚丼は私のお気に入りで、食べるだけでなく作ることももちろんできる。青花磁風のボウルに入っていて、蓋をしていると、濃厚な味が中に閉じこめられている。蓋を開けた瞬間の芳醇な香りと、その瞬間に目に飛び込んで来る「驚き感」は、すべて豚丼がもたらした楽しみだ。

午後3時から5時までは「ドリンクタイム」だ。この時間帯の客はコーヒーやココア、ジュースを注文し、同僚や親戚や友人と午後いっぱい座って話す。コーヒーを注文するとき、客はコーヒーの名前だけを言うのが普通だが、店員は「ホットですか、アイスですか」と尋ねる必要がある。聞かないと、気候によって客にとってホットが良いかアイスが良いかを判断するのは、往々にして自分の判断では間違ってしまうからだ。

この時間帯の中で、私の最も好きな飲み物はココアだ。濃厚な熱いココアは冬にはもちろん完璧で気分を和らげる絶品だが、夏にもまた格別の体験をもたらすことができる。

5時を過ぎて、夕食の時間に入る。ディナーの時間帯の客は、定食やビールとあわせて小皿を注文するのが一般的だ、店員はテーブルの上のナプキンや箸、砂糖や牛乳などを頻繁に補充している。忙しい時、台所の食材は急速に枯渇し、料理人はどのメニューはもう注文できないとか、どの料理が何人分残っているかを教えてくれる。

このように、注文したい料理がなくなってしまっていた時、客は怒りながら、自分では答えがわかっていても店員に「どうして売り切れたの?」などの質問をしたりすることが多かった。

午後7時、新規客の入場をお断りし、7時15分、ラストオーダの有無を尋ねる。すべての客が店を出たら、床を掃除し、清潔にして、ナプキン、箸、牛乳、シロップ、コーヒー豆を補充する。コーヒーメーカー、アイスクリームメーカー、コップ、フォーク、スプーンを元の位置に戻すか、あるべき位置に置き、最後に翌日パイロットや乗務員たちが注文した飲み物のコップとセットトレイを用意する。

レジで精算が終わったら、その日の収入を金庫に入れて、一日の仕事が終わる。

作業中は、常にコーヒーメーカーで搾り残したコーヒー豆の糟を掃除したり、ソースやゴマ、海苔を補充したり、台所に漬物や味噌汁のベース、じゃこ天などを用意したりするほか、アイスクリームメーカーを数時間おきに動かしたりするなどの些細な作業もあった。

台所に入る最初のステップは手袋と帽子を着用することだ。もし食べ物の中に髪の毛が落ちたら、それは食べ物がまずいという結果よりずっと深刻な結果をもたらす。客はその場で怒るだけでなく、空港事務所に苦情を申し立てる。1、2週間後、空港事務所のスタッフが詳細を尋問しに来る。

台所は食材を絶えず補充し、納入業者から提供された食材を仕分け、解凍、切り身にして味付けをしたり、野菜を千切りにして漬け込んだりして、常にメニューの料理が注文されると出てくる状態を保つ必要がある。各種冷凍食材の賞味期限はこまめにチェックしなければならず、期限切れになると捨てたり、無料で従業員に食べさせたりするしかない。

台所の掃除も大切だ。お客さんが少ないときは、台所のシンクやゴミ箱、ポテトフライの入ったビニール袋、刃物、ソースの入った瓶や缶を掃除する。

このほか、週に数回の「油交換」は力仕事で、フライドチキン用の油は定期的に交換する必要があり、十数キロのドラム缶を高く持ち上げて数分間空中にとどまらせる。

厨房の油は、食の安全性に基づいて定期的に交換されていなくても、他に誰にも知られることはないが、このレストランのほとんどの人は、ルールを厳守することを自覚していた。中国のレストランで地溝油が使われていることと比較すると、職業に対する畏敬の念、客に対する責任の念に心から感心せずにはいられない。

このレストランで日本のサービスの一端を垣間見ることができ、誠に感心している。従業員一人一人の自律性が高く、責任感とサービス意識が溢れていた。私の考えでは、時に「過剰サービス」の疑いがあるが、それこそが、日本がグローバルサービスの最高の称号を勝ち取ることになった所以ではないだろうか。

高松の私にとっての意味は、日本社会への扉であり、私はそれを押し開けて、いつの間にか日本の社会へ入ってしまった。このレストランは私にとっての意味は、日本の職場への扉で、私はそれを押し開けて入り、日本の職場の行働習慣と従業員の風貌品性を理解し始めた。